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【小説】ふたりひとり


           ふ た り ひ と り

あるところに なかのいい兄弟がいました
兄弟は いつも いっしょにいます
ふたりは おたがいのことを 自分のことのように たいせつにしました
ある時 おわかれの日がやってきました
「いやだ いやだ」「ひとりはいやだ」
兄は言いました
「それなら ふたりで だれもいないところに行こう」
ふたりは はなればなれに なる前に だれもついて行けないところに
きえてしまいました


あるところに なかのいい兄弟がいました
兄弟は いつも いっしょにいます
ふたりは おたがいのことを 自分のことのように たいせつにしました
ある時 おわかれの日がやってきました
「いやだ いやだ」「ひとりはいやだ」
ある朝おきたら ふたりはひとりずつになっていました
なんかい朝がきても もうひとりの自分はいませんでした


やがてこころもからだも大きくなりました
ふたりはひとりで歩けるようになると もうひとりの自分をさがしにいきました
そのうちみつからなくて泣きだしました
けれどふたりは おたがいをさがしつづけました
ある時ふたりは うまれたおうちをおもいだしました
「きっと おうちにかえれば ふたりはひとり」
ふたりはうまれたおうちにむかって あるき出しました

ある朝おきたら ふたりはいっしょにいました
いつまでも ふたりはいっしょにくらしました



まよいなんて どこにもなかった  ぼくらの分だけ ぼくらの道があったのだ

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